書籍「不登校そうだんしつ」出版

あべが思うこと

自覚

記事の中でも何度か紹介していますが、
ボクはよく保護者の方へ
「お子さんの『いいところ』を書いてみて下さい」と言います。

そこで書いた「いいところ」。
書き出すことで、保護者の方も再確認できたりするものです。
この作業は、
おひとりでもできることですので、是非やってみて下さい。

今日の記事でお伝えしたいのは、その先のこと。

 

お子さんの「いいところ」を再確認したら、
そこからは、
それを本人へ伝えてあげたいですね。

 

「伝える」というと難しく感じる方が多いと思います。

今さら本人に言っても聞く耳を持たなそう、とか
あらたまって言うのもおかしいだろう、とか。

なので、
「伝える」よりも「自覚させてあげる」というイメージでいて下さい。


本人へ直接的に伝えなくても、
自覚させてあげられればいいのです。

例えば、
その「いいところ」が現れたときに、ほめてあげる。
あるいは、
本人ではなくても、ご友人やご家族など他の人へそのことを伝えるようにする。

そうした心がけによって、
本人へ直接「伝える」ことができずとも、
いつしか「自覚」ができるようになるものです。

自分自身が長所を自覚するのは、
もちろん直接的に伝えられたときもそうですが、
いざというときや、咄嗟のときの言動であったり、
またコツコツとした蓄積によってであったり、
と様々です。

「どうやって伝えよう」
「いつ伝えようか」
「伝えても理解してくれるだろうか」
などと考えるよりも、
色々な形で「いつか必ず自覚させてあげよう」くらいのイメージがいいです。

せっかく伝えても、
「今さら何なの、わざとらしいな」などと言われそうであれば、
無理に直接言わなくてもいいのです。
咄嗟のとき、あるいはコツコツと、
いつか必ず自覚させてあげよう、自覚してもらおう、というつもりで
本人の「いいところ」を頭に置き続けてあげて下さい。


直接的に伝えられる方は、もちろんそうしてあげて下さい。
「あなたのこういうところは、いいところだ」と、
伝えてあげられれば、そうしたいところです。

ただ、逆のことが咄嗟に出ないように気をつけてあげて下さいね。

日々の何気ない発言や、
本人を前に誰かへ発した言葉などが、
「いいところ」を認めないようなものになってしまっては、
せっかく伝えてあげても、それを打ち消してしまいかねません。

注意したいのは、つい謙遜して出る言葉などです。

「この子はもう、ぜんぜんダメダメで~」と謙遜した会話をする機会はあると思いますが、
本人がいる前での謙遜しすぎは、ややもすると本音にとられかねません。
せっかく「いいところ」を伝えてあげても、
何が本音かわからなくなり、「自覚」までするのは難しくなります。

だったら逆の方がいいです。
直接伝えたことはなくとも、
「この子って実は、こんなところがあって感心する~」などと
誰かに対しての言葉を本人の前で発してあげられれば
とたんに「自覚」が促されます。


ボクはよく、
親子で面談に来られるケースで
とにかく本人を「かばう」ことがあります。

保護者の方が「この子はこんなで~あんなで~」と課題点を挙げた際に、
すかさず「そうは思いませんよ」「全くそれを感じません」と言ったり、
お話をさえぎってでも「お母さん、それは推測ですよね、たぶん外れてます」と言ったり、
保護者の方が気をわるくされる可能性も承知で、あえてかばうことがあります。

これは、
子どもの前で格好をつけようとか、いい大人に思われようとか、
そういう小さな次元の話ではなく、
こういうシチュエーションでの一言が大きな影響を及ぼす可能性が高いから、
というだけの理由であり、
ここでの一言が決定的なダメージになることを避けたいという意図があるからです。

カウンセラーなどを目指している方も気をつけましょうね。
保護者の方の話を「うんうん、そうですか」などと聞き続けることで、
本人へダメージが蓄積されていくケースがあることを、それこそボクらは自覚しなければなりません。


「いいところ」をいちばんよく知ってくれているのは、
やはり身近な保護者の方です。

それを自覚させてあげられるのも、
やはり保護者の方なのです。

たいていの場合、
本人が最も多く耳にする言葉や、目にする態度は、保護者の方のものです。


「だから常にちゃんとしましょう」ということではないですよ。
「いいところ」を自覚させてあげられるチャンスが数多く訪れるのは保護者の方ですので、
「いいところを、自覚させてあげよう、自覚させてあげたい」という、そんなイメージを持ってみて下さい、ということです。

「伝える」よりも「自覚させてあげる」。
なんとなくでも、みなさんに伝わればいいなと思いつつ書いていますが、
あまりうまく伝わらない気がします。

やはり「伝える」というのは難しいものですね。
「『伝える』よりも『自覚』をさせてあげたいな」などと自覚をして頂けたら、それでいいです。