書籍「不登校そうだんしつ」出版

あべが思うこと

「行かない」んじゃなくて、「行けない」んだってば

ただの「なまけ」で
学校へ行かない子もいます。
家庭環境の影響で
「もうやってられない」とばかりに行かない子もいます。
学校での勉強よりもゲームの方が楽しくて
行かない子もいます。
また、
人間関係の悩みなどにより、
行きたいな、でも、どうしようかな、と
迷ったり悩んだりしながら
「行かない」という選択をする子もいます。
そして、
自分でもよくわからないけれど
とにかく「行けない」という子がいます。

近年、急増しているのは
こうした、「行けない」子供達です。
もちろん、
先にあげた「行かない」という子も少なくありませんが、
「行けない」子は増えているのです。

「うつ」の経験をされた方、あるいは周囲にそうした方がいらっしゃった方などでしたら
いくらかは理解をしてあげられるかと思いますが、
行かなければならない、
行ったほうが良い、
行きたい、
行こう、
と、思っていても
カラダが言うことを聞かないのです。
自分でも、どうにもならないのです。
そうした子供たちが増えているのです。

しつこいようですが、
全ての不登校生がそうだと言っているのではありません。
でも、
どうしても、
「不登校」=「行かない」。
という図式は、アタマから離しづらいもの。

特に、いまの保護者の方々の世代では
まだまだ不登校が珍しかったり、不登校=登校拒否だったり、
そんな時代でした。

不登校だからといって、
例えば若年性の「うつ」ではないかと考えてみることなど
なかった時代だったはずです。

なんで「行かない」の?
行かなきゃダメよ、行った方がイイわよ、わかってるの?
わかっているんです、本人は。

むしろ、
行きたいのに「行けない」という子もいるのです。
だから、苦しいんです。
わかっているのに、カラダが動かないんですから。
保護者の方も苦しいと思います、大変だと思います。
でも、本人も苦しいんです。

以前に担当した中学生の女の子。
保護者の方からは

「ケータイに夢中で依存している。
 ケータイばかりやっていて学校へ行くのがメンドウになっている。
 ケータイを取り上げれば怒るし、
 だけど、ケータイをイジっていると学校に行かないし。」
という、ご相談内容でした。

その数日後、
彼女はボクに言いました。
「『行かない』んじゃなくて、『行けない』んだってば」
と。

行こうと思っても、カラダが全く動かせなくなる。
行きたいのに、どうしても行けない。
だからせめて、
メールをくれる友達とつながっていたくて、ケータイを手ばなせない、
とのこと。

「ケータイに夢中→だから学校へ行かない」
ではなかったのです、
「学校へ行けない→だからせめてケータイで友達と」
だったのです、
順番が逆でした。
「行かない」子には、
強い態度で接してあげるケースがあってもイイと思っています、
愛情さえ十分であれば。
でも、
「行けない」子であれば、
あれこれ言っても本人の苦しみを増すだけです。
まずは、わかってあげて欲しい。
そうすることで、
本人が少し楽になるでしょうし、
ひいては、保護者の方も気持ちが楽に気がします。

「行かない」「行けない」の判断は難しいです。
というか、
プロであればあるほど「断言」はしないはずです。

なので、
どっちかを判断しようとするのではなく、
どっちの可能性もある、ということを知っておいてもらえれば、と。

そして、繰り返しですが、
保護者の皆さんの世代は、どうしても
「不登校」=「行かない」という判断をしがちですので、
「行かない」のではなく「行けない」のかも、と
ちょっと考えてあげてみて下さい、ということです。

「ウチの子はどっちでしょう?」なんて聞かないで下さいね、
ボクは、
「わかりません」と答えると思います。
わからなくてイイんです。

「行かない」んじゃなく、「行けない」のかもな、って
ちょっと思ってあげてもらえれば、イイんです。