書籍「不登校そうだんしつ」出版

あべが思うこと

生徒になる

保護者の方は、
たまには、お子さまから何かを教えてもらって下さい。

なんでもイイですよ。

夢中になっているゲームのことでも、
欲しがっていたマンガのことでも、
好きな芸能人の魅力についてでも、

あるいは、

お味噌汁の具材についてとか、
部屋の間取りはこれでイイかとか、
スマホはどの機種がイイかとか、なんでもイイです。

普段は、ああしなさい、こうしなさい、どうしてそうなの、と
“上から”接していることでしょうから、
たまには、“下”として接してみて下さい。


ある小学生、彼は「ポケモン」が好きだとのこと。

ボクは「ポケモン」のことは全く無知だったので、
「いちから説明して欲しい」と言いました。

もう、目が輝いていましたね。
キャラクターの描かれたカードを取り出したりしながら、
それはそれは熱心に説明をしてくれました。

たまにボクが質問をすると、
時にはスラスラと、また時には、ちょっと考えながら、あいまいだったりしながら、
それでも、懸命に答えてくれました。

おかげで、数十分後には、
ボクまで「ポケモン」の世界が好きになりそうなくらい。


「これ、お母さんにも教えてあげなよ」

「いや、お母さん、興味ないから」

そうだろうな、とは思いました。
だいたい、大人が興味を持つ類いのことではないですからね。
ましてや、学校へ行っていない状態で、
わざわざ「ポケモン」の話を聞く余裕など、保護者の方にはないでしょう。

しかし、
日頃、こんなことを話す相手がいなかったからこそ、
こんなに目を輝かせて話してくれたのかな、と感じたりもしました。

「話してきなよ、教えてあげなよ、お母さんに」
「やだよ、こないだカード捨てられた」

仕方ないですね、どちらの気持ちも当然かもしれません。


言うまでもなく、
ボクは別に保護者の方へ「ポケモン」を学んで欲しかったのではなく、
その子のキラキラとした目を見て欲しかったのです。

別の日、お母さまへ提案をしました、
「『ポケモン』のことを教えてもらってみて下さい」と。

お母さまは意図をわかって下さり、さっそく声をかけたようですが、
結果、キラキラした目を見ることはできなかったとのこと。

別の日、
「なんで、お母さんに教えてあげなかったんだよ」
「やだよ、聞く気ないもん」
「教えなよ、ボクに教えてくれたみたいに」
「あべさんに言われてイヤイヤ聞いてくるんじゃ意味ないよ」
「イヤイヤじゃないよ、『ポケモンのことを教えてもらってみて』『目が輝くから』と言ったら、お母さんは『じゃあ聞いてみます』って、すぐに言ったよ」
「説得したんでしょ」
「説得なんか、してないって」
「・・・」
「・・・」
「・・・なんか、恥ずかしいよ」
「なんだそれ、イイんだよ、このことについては○○くんの方が『先生』なんだから、堂々と語ってみ」
「じゃあ、なに、ウチの親は『生徒』?」
「そう、『生徒』」
「何年生かな、何十年生か」
「小3くらいじゃん」
「俺が教えて『あげる』んだ」
「そう、お母さんは教えて『もらう』の」

彼は笑っていました。
その時点で、すでに少々キラキラしていたような気がします。

別の日、お母さまへ聞くと「熱心に説明してくれました」とのこと。
「どういうところが好きなの」から始めて、
あとは色々と質問をし、彼が答えるうちに、だんだん口がなめらかになったようです。

「お母さんに話したんだってね、喜んでたよ」
「そんなに教えてないよ」
「そうなの?」
「うん、まだ10分の1くらいしか教えてないから」
「どういうこと?」
「うーん、俺もよくわかんない」

ずいぶん照れた様子でしたが、
でも、やはり彼は少しキラキラしていました。


たまには“先生”になってもらってみては、いかがでしょうか。

なんでもイイので、教えてもらって下さい。
ウンウン、と、お子さまの“授業”を聞いてみて下さい。
わからないことは、質問をしてみましょう、“生徒”のように。

“勉強”になるかもしれませんよ