書籍「不登校そうだんしつ」出版

あべが思うこと

動き始め

それまでずっと動けずにいたけれど、
ここに来て本人が、
ちょっと動けるようになってきた、
前向きになってきた、
ヤル気を出し始めた、
といった状態のとき、
保護者の方に気をつけて欲しいことがあります。

例えば、
ついついレールを敷いてしまい本人がつらくなり、
なにもかもヤル気がなくなって学校からも勉強からも長く離れてしまった。

しかし最近、
「勉強を頑張ってみようかな」と言い、ちょっと動き始めた。

そこで、
「今から頑張れば、周りに追いつけるわよ」
「今から頑張れば、受験には間に合って、みんなと同じようになれるんだから」
なとど、
また「周り」や「みんな」と「同じ」というレールを敷かないように気をつけましょうね。

レールでなければ、
「シナリオ」という言葉でもいいです。

保護者の方が思い描いていたシナリオとは違うストーリーになり、
親子ともども悩み苦しんだ。

ならば、
復活のシナリオを、今度は思い描きすぎないように気をつけましょう。

思い描いた通りにはならない、ということを
せっかく本人が教えてくれたのですから、
シナリオを描くことなどは、いったん控えた方がいいのです。

だからといって、
せっかく動き始めたのに応援しない、ということではありません。
背中を押してあげることも必要な場面はあります。

ただ、押しすぎない、ましてや、引っ張ったりもしないよう、
動き始めのときには意識したいところです。
背中を押す「加減」やイメージについては、またの機会に書きますね。

特に本人が
「このままでは、お父さんお母さんに申し訳ないから」という気持ちで動き始めることはあります。

「やっとヤル気になった」のではなく、
「お母さんを苦しめていることに耐えられないから」ということはあります。

そんなときは、
レールもシナリオも抜きにして、
今日も明日も私はあなたの味方だよ、ということを全身で伝えることの方が先です。

「私はもうレールを外して、あなたのことを見ているんだよ」と。

 

目標は大切です。
そこに向かってあきらめないことも、そして得られる達成感も大きな価値があります。
なので、前述のように「応援しない」という意味ではありません。

動き始めのときは、
まず、動きやすくしてあげることの方が大切だということです。

そして、また動けなくなったときにも落ち着いて受けとめてあげられる気持ちも必要です。
三歩進んだら、
二歩下がっても、休憩しても、寄り道しても、それでもいい
というくらいに、動きやすくしてあげることを優先させてあげて下さい。

そういう思考で接するために、
とてもジャマになってしまうのが、レールやシナリオです。

そもそもレールもシナリオも、
保護者が全て決めることはできません。
小さな頃は全てを決めてあげても、将来は本人が描くストーリーを保護者が見せてもらう側になりますよね。

動き始めというのは、
ちょうとバトンタッチする時期なのかもしれませんよ。