書籍「不登校そうだんしつ」出版

あべが思うこと

両輪

テーマを1つに決めて頑張った方がいい、
そういうことはあります。

しかし、
1つだけと決めてしまわない方がいいこともあります。

例えば、
1年以上も学校を休んでいたが、
最近になって「行きたい」と言い始めた、という場合。

まずは
学校へ行くことを応援してあげる動きをとってあげたいところですが、
と共に、
本人の気持ちが焦りすぎないように心を休めてあげることも必要だったりします。

どちらか一方だけでは難しいです。

応援の気持ちだけで背中を押し続けては
本人へ過度のプレッシャーがかかるかもしれませんし、
逆に、
休ませてあげようという気持ちだけでは
本人の「行きたい」という気持ちを無視してしまいかねません。

両方が必要だったりするのです。
1つだけではなく、
2つ、あるいは3つ以上のテーマを持った方がいい場面は多いです。

また例えてしまいますが、
子育てに集中するあまり、生活の意識がそれ「1つだけ」になっては、
かえって本人が息苦しくなることがあります。

そうならないためにも、
お子さんのこと、に加えて、
ボクがよく言う「自分の時間を作ること」などを意識し、
それら両方をテーマにしたいところです。

また例えましょうか。

「ほめること」を意識しすぎてそれ「1つだけ」になっては、
わるいことをしてもうまく注意がしてあげられず、
それがストレスとなってイライラしたり、
一気に爆発して必要以上に責めてしまったり、
そうなっては何のために「ほめること」を意識していたのか、わからなくなります。

別の例えを出してみます。

お子さんが受験を控えている場合に、
「合格して欲しい」と強く願ってあげることは大事ですが
それ「1つだけ」になっては、まずうまくいかないことが多いです、
休ませてあげること、
受験は通過点だと教えてあげること、
結果よりも経過をほめてあげること、
受験できること自体に感謝をすること、
など、いくらでもテーマを持った方が親子共々に充実したりします。

例を挙げればキリがないですが、
1つだけ、ではなく、同時に別のテーマを持っていた方がいいことは多いのです。

「両立」とか「並行して」という表現が適切なのですが、
あえてタイトルを「両輪」としました。

一般的な自動車には、
左側と右側にタイヤがついていますよね、
あれが同時に回ることでうまく進めるわけです。

人力車や台車でもそう。
左と右とで両方ともグルグル回って進みます。

自転車やバイクでは前と後ろ。
やはり同時にグルグルと回って、バランスをとるわけです。

あれもこれもやるなんて難しい、
と思われるかもしれません。

1つでさえ大変なのに、
2つもテーマなんか意識できない、と感じるかもしれません。

しかし、
「あれもこれも」ではなく「両輪」だと考えて下さい。

それぞれが同時に存在して動くことで、
進む力が増したり、バランスがとれたりするわけです。

「優しいお母さん」と「怒るお母さん」がいてもいいんです。
「本当の私はどっちなんだ」
「どちらの私が子どもにとって良いんだろう」
「どちらの私が正しいんだろう」
ではなくて、
「両輪」のイメージでいいんです、どちらもグルグル同時に回ってバランスがとれることもあります。

片方のタイヤばかり気にして、
もう片方を動かさないでいたのでは、
進むものも進みませんし、バランスもとれません。
さらに頑張ろうとしても、
また片方ばかり頑張ってしまっては、余計に違う方向へ進んでしまいます。

いくつかのテーマ、あるいは、いくつかの自分を、
時には並行して意識し、両立などしてみて下さい、
「両輪」のイメージで。

あれもこれも、ではなく、
同時に回す方がうまく進むかもしれないのです。

タイヤが1つしかないのは一輪車です。
乗るのは難しいですよね。

自動車などはタイヤが4つも同時に動いています。
バランスもスピードも一輪車とは比べものになりませんよね。

意識を「1つだけ」にしないことは時として非常に大切なことです。
たまには、
いい意味で、あれもこれも頭に置いてみて「両輪」だと思ってみて下さい。

タイヤが多い方が、
乗り心地も良いですしね。
本人も保護者の方も、両方とも。