書籍「不登校そうだんしつ」出版

あべが思うこと

時間差と本心

「すごく甘えてくる」というようなご相談が増えています、
中学生や、それ以上の年令の男の子のお母さまから。

あれを買って、これを買って、というのも甘えと言えるでしょうし、
あれは嫌だ、これは嫌だ、というのも甘えに見えることでしょう。

ただ、ご相談を頂く内容は少し違っていまして、
「よく、くっついてくる」
「一緒の布団で寝たがる」
といったものです。

「中学生以上の男の子」の「お母さま」としては、
ちょっと心配になってもおかしくない行動や欲求でしょうね。
今の保護者世代からすれば、
「中学生以上の男の子」の行動としては違和感があるのも無理はないと思います。

結論から言いますと、
そうした甘えは、いったん受け入れてあげて下さい。

もっと年令が下のときであれば素直に受け入れられますよね。
小さい頃に、
くっつきたがったり、一緒の布団に入りたがったりは、むしろ自然。

それが、時間差で現れているだけだと思って下さい。
もっと以前に
「やってこなかったこと」「やりたくても、やれなかったこと」が
年を経て現れることはありますし、
そう思われるケースは非常に増えています。
そうであれば、やらせてあげて欲しいと思います。

いくらか違和感があっても、
「こうしたかったけど、できないでいたんだな」と解釈をしてあげて下さい。
違和感が大きいようであっても、
少しずつ行動や欲求を変化させてあげることはできますので大丈夫です。

「いったん受け入れる」ということを意識してあげて下さい。
逆に、
「いったい何歳だと思ってるの」
「もうそんなに子どもじゃないんだから」などと、
全てを否定するような対応は避けてあげて下さい。

ただの甘えではないのです。
本当は、もっと昔に「やりたかったこと」かもしれないのです。

それをやっと意思表示できるようになったのかもしれないのです。
それをやっと言葉に出せるようになったのかもしれないのです。
勇気を出して、お母さまへは態度で示しているのかもしれないのです。

なので、どれほど違和感があっても
「いったん」は受け入れてあげて下さい。

そうしたご相談が多い、という時点で
あまり珍しいことでもなくなっています。

周りの同世代の子と比較をして、
「ウチの子は、おかしい」などと早急な判断をしないで下さいね。
繰り返しですが、
それ以前に我慢していたことを要求しているだけかもしれません。

「成長が遅い」というとらえ方も、少し違ってきます。
「時間差」が生じているのは事実ですが、成長の度合いとは必ずしも関連するとは限りません。
単に、時間差がある、というだけのことです。

周りの同世代の子と比較をしないこととともに、
さらに気をつけて頂きたいのは、ごきょうだいとの比較です。

同じ親が育てたのに、と思われるかもしれませんが
やはり比較をせずに本人の意思表示を「いったん」そのまま受けとめましょう。
きょうだいとはいえ「別人格」ですからね。

この年令で、この行動は違和感がある、と思っても
いったんは受け入れてみましょう。
直してあげようと思ったら、少しずつという意識で大丈夫です。

「よく、しゃべる」なども似た部分があります。

もしかしたら、
小さな頃に、話したいことを話さずにいた時期があったのかもしれません。

だとすれば、
どんどん話させてあげたいですね。

「周りの男の子は反抗期で母親とは話さないらしいのに、ウチの子はおかしい」
ではなく、
いったんは受け入れて、どんどん話させてあげて下さい。
何年か前に話せないでいたぶんだけ、いま話してくれていると思って。

例を挙げるとキリがなく、まとまりのない記事になってしまいましたが、
簡単に言えば、個性なのです。

個性を大切に、というのは
今の姿を大切に、ということでもあり、
ちょっとした違和感も大切に、ということとも言えます。

それが犯罪や迷惑行為でない限りは、
尊重してみましょう。

時間差はあっても、
言えなかった本音や、表せなかった本心を
今まさに見せてくれていると思えば、
その「個性」を受け入れやすくなるのではないでしょうか。